28 大 胡(おおこ)

祈り岩の北700メ−トルのところにある。

源氏の武将伊勢三郎義盛の郎党に、大胡小橋太という人物がいた。彼は駿河国田子浦の出身で、富士川で鍛えた水練の腕前は、半日でも水に潜る程の達人であった。

激戦の中なのに平家の武者で、戦いもせず船を乗り回して義経を追っかけ回している者を見つけた。小橋太は褌をつけ刀を2本持って木の影から密かに海中へ入っていった。これには敵も身方も気がつかなかったらしい。

その平家の武者は、能登守教経の密命をうけていた、備前国住人鞆六郎であった。六郎が船上でもたもたしているので、突然に浮上して足を掴んで海中へ引っ張り込んだ。
さすが陸では60人力の六郎も水練の心得が無かったので、小橋太は深みへ引き込み首かき切って、髻をくわえて源氏の陣に帰ってきた。

これを聞いた義経は殊のほか喜んで、鷲作りの太刀を贈って、その労をねぎらった。

この後源頼朝は、彼の武芸に感心して千余石の賞与えたという。




後方は五剣山