は じ め に                     平成八年春三月  天野 忠 
 

数年前より、せめて自分の住む大橋前地区の、民話に類する物、言い伝えなどを収集しておこうと思っていたが、暇があり過ぎるということは厄介なもので、逆になかなか取り掛かることができなかった。

これでは何時までたっても記録することができないと、昨年七十才になったのを契機に、収集を始めることにして、まず大橋前地区をまわってみることにした。

この時、六十才代、七十才代の方達は、少年時代や青年時代を何らかの形で戦争に影響されていたのか、祖父母から昔話を聞く機会がなかったのか、この種の話を知っている方が少なく、八十才以上の方でなければ聞く事が出来ないことが分かったし、ある方は、「こんな話でよかったら、何ぼでも知っていますよ」と言ってくれていたが、再度の訪問を予定していたところ、この九十二才の長老は昨年亡くなっていたし、長期の入院をよぎなくされた方もいたし、これでは折角の昔話が聞けなくなると、精力的に収集してみることにした。


計画は各地区で二名乃至三名位の長老から、聞き取りをしようと思っていたが、なかなか計画通りいかず、不十分の感無きにしも非ずであるが、屋島の語り部と言われている壇の浦の藤岡元栄氏・他の皆さんの御協力を得て一応纏めてみた。

なお、今後この種の話を聞く機会があれば、逐次これに追記していくことにしたい。